学会について

会長挨拶

会長 阿辻 哲次

会長 阿辻 哲次

京都大学名誉教授・(公財)日本漢字能力検定協会漢字文化研究所所長

 太古の時代から現在まで、人類は文字による記録を通じて先人から伝えられた知識を獲得し、同時代の人々とのコミュニケーションをはかり、後世に伝承する知識と経験を文字で記録してきた。この文字による文化の発展と情報の伝達は、これからも基本的に変化することがないだろう。
 そしてこの文字を媒介とした古今東西の文化史において、漢字ほど長い歴史と多様な発展をうちに秘めた文字体系は他になく、しかもこの体系は現代においてもいささかも価値を失わず、それどころか、その文字がもつ汎用性と効率性が新しい時代の情況にも機敏に対応し、従来にはなかった新しい様相を展開しつつある。
 人が生きていく上で絶対に必要な空気とはちがって、文字は人の生存に絶対に不可欠なものではない。しかし、文字を使うことの便利さにはかり知れない大きなものがある。
 人は空気を吸う時に、できるだけ清浄でおいしい空気を吸いたいと願う。そしてそれと同様に、どうせ文字を使うのならば、自分たちが未来に引き継ぐ文化の向上に大きく貢献できる、便利で効率的な、優れた文字を使いたいと思うのは自然な感情である。
 漢字は、これからの情報社会において、ますますその役割を増大させることであろう。あらゆる方面から漢字に関わる人々の力量を結集したこの学会が、これからの漢字文化の構築に大きな力を発揮することを心から切望するしだいである。

2018年3月29日
設立に際して

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